知る人ぞ知るポール・レオトー!
稀代の猫暮らしの大家!





ポール・レオトーいま知る限り、これほど沢山の猫を飼い世話をした文学者は古今まれと言ってもいいだろう。それは自らの屋敷に百匹近い猫を飼い、リュクサンブール公園に棲息する猫の世話も日々怠らなかったほどの愛護精神、それは猫に限らず飼育するあらゆる動物にも及んでいたというから驚きである。

その名は、ポール・レオトー。不幸にして日本では充分に人口に膾炙しているとは言えない。しかもそのほとんどはきわめて永きに渡る日記文学で、翻訳もほとんど無い……に等しい。
しかし若きときよりこのポール・レオトーの引用をたび重ねて目にし、堀口大学による抄訳にも親しみ、その女性への忌憚の無い、正確な箴言風のことばはなかなかの含蓄であった。フランスではポール・レオトー賞という文学賞があり、その何回目かの受賞者が動物愛護運動でも名を馳せたブリジット・バルドーで、その作品は「イニシャルはBB」=バルドー自伝である。
バルドー自身が極めて猫的、いや猫ではないかと怪しむくらいである。
  
ポール・レオトーの肖像/イニシャルはBB同じフランスではさらに本好きでも知られるフランソワ・トリュフォーは、自作で愛読書を
<出演>させることでも、知る人ぞ知る趣味ともいえるが、ポール・レオトーはアントワーヌ・ドワネル/シリーズの「家庭」でその著書を
<出演>させていて、改めて嬉しくなったものである。

しかしポール・レオトーがそんなに猫好きであったというのを知るのはわが愛猫と同居するようになってからで、それは同じその時期に「ポール・レオトーの肖像」という評伝が奇しくも発売されたからである。それはまこと天啓というべきタイミングであった。以下は松浦寿輝氏の書評(読売2001・10・21)抄録である。

  この不思議な人物をいったいどう形容したものか。
  歯に衣着せぬ毒舌の劇評で畏(おそ)れられ、
  また煙たがられていた鋭利な時評家。
  雑誌に載せた小説を単行本化すればゴンクール賞
  間違いなしと折り紙をつけられても、
  書き直しが必要だとのらりくらり逃げつづけ、
  死ぬまで本を出さなかったへそ曲がり。
  街路で拾ってきた何10匹もの犬猫をひたすら愛した偏屈な独身者。
  小説家プルーストや詩人ヴァレリーとほぼ同い年のレオトーは、
  この2人のように輝かしい傑作で文学史に名を残したわけではない。
  彼が選んだのは、メルキュール社の編集者として
  パリ文壇の人間模様をじっと見つめ、
  そこでの観察を辛辣な皮肉とともに膨大な日記に記録しつづける
  という生涯である。

トリュフォー「家庭」そこにはむろんレオトーを翻訳した著者の引用も数多くあって、レオトー撰文集の趣もあるのだが、なおさらどうしても1冊でもいい翻訳書を読みたい願望がいや増し、ネットで古本を漁って発見し求めたのが、新潮社が'73年に刊行した「禁じられた領域」であった。これがまた端倪すべからざる性愛日記で、女性と恋愛についての明晰な箴言や警句の源はここにあったかと、巻を閉じたのである。
母親との確執、アンヌ・ケーサックとの性愛、まこと恐るべき執念の観察と記録の偏屈偏執の文学者である。猫好きも、とてもなまなか尋常一様ではない。
しかもこの恐るべき猫好きは20世紀中頃(1872〜1956)まで同時代人だったのである。

Copyright (C) 2007 Ryo Izaki,All rights reserved.

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posted by 猫ニャン at 13:04 | Comment(0) | TrackBack(1) | 猫と芸術家たち
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